「タイタニック(1997年)」はエンタメ作品として完璧な出来である。あらゆる客層のニーズに応えられるよう、全方位の人間の琴線に触れる要素がこれでもかというくらい内包されている。
以下、思い付くところを箇条書きで列挙してみる
・タイタニック沈没は歴史的事実である(実話好きに刺さる)
・当時実際に生存者がまだ存命中だった(説得力が増す)
・「エイリアン2」「ターミネーター2」などの大ヒットSF映画を産み出しまくっていたジェームス・キャメロンが監督(SFオタの信頼)
・実物大のタイタニックやサウサンプトン港の超巨大セットを造り上げた(特撮オタの信頼)
・当時最先端の技術力を持っていたデジタル・ドメイン社によるCG映像(視覚効果オタも信頼)
・キャメロン自ら撮影した実際に海底で沈没しているタイタニック号の貴重な映像(ドキュメンタリー要素)
・大筋のプロットはラブストーリー(万人受け)
・「ロミオ&ジュリエット」等で当時圧倒的に女性に人気だったレオナルド・ディカプリオ主演(女性客への引き)
・ムチムチ巨乳ヒロインの大胆なヌード(男性客への引き)
・豪華絢爛な舞台設定(みんな大好き豪華客船)
・金持ちは一等客室、貧乏人は三等客室という格差描写(批評家が大好きなヒエラルキー描写)
・大西洋上の客船が沈没するという限られた空間の中での物語(単純明快なソリッド・シチュエーション)
・夢のような船旅の最中で数千人が死亡するという壮絶な落差(カタストロフィ)
・成就しない愛、主人公の悲劇的結末(泣けるストーリーと話題に)
・セリーヌ・ディオンによるキャッチーな主題歌(老若男女幅広い認知度)
・当時歴代最高額だった200億円という製作費(間違いなく超大作)
・映画賞総ナメ、アカデミー賞歴代最多11部門受賞(完璧なお墨付き)
これでヒットしないわけがない
これぞ映画。エンタメの最高峰であり、題材的にもタイミング的にもこれほど好条件のものは今後出て来ないだろう。
日本でも洋画歴代1位の記録を未だ保持しており、上映していた当時も超ロングランしていた記憶がある。確かビデオ化も公開から1年後くらいだっので、海外版の字幕無しVHSがやたら出回っていた。
小学6年の時に祖母と映画館に観に行ってから何度も繰り返し観ているが、今でもこの面白さは色褪せない。公開から10年後に発売されたスペシャルエディション収録の未公開シーン集はこれまた衝撃だった。(別バージョンのエンディングが明確なラストシーンの意図があったので)
批判も多く、恋愛パートが陳腐だとか、実際に船は折れてないだとか色々言われてはいるが、これも大ヒットして沢山の人の目に触れた所以であろう。実際に脚本はそこまで評価されていない(アカデミー賞もノミネート無しだった)。
しかしそれを補って余るほどの魅力が詰まっていて、末長く支持される偉大な作品なのだ。
個人的には当時かなり叩かれていた(出る杭は打たれる状態)主演の2人が、今や両者ともアカデミー主演男優賞、主演女優賞を得て誰もが認める名優となったのが何よりも嬉しく思っています。