SOUTH PARKの住人

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映画レビュー「青空エール」

青空エール」(2016年)

★★☆

金足農業が準々決勝を勝ち抜いたら「青空エール」を見ますという公約を掲げて、なんと準優勝してしまった。これは「青空エール」どころでは済まない感じはするが、とりあえず観たので簡単にレビューいたします。

 


「青空エール」予告



高校デビュー」「俺物語!!」などでも知られる河原和音の人気コミックを、「orange オレンジ」の土屋太鳳と「仮面ライダードライブ」「下町ロケット」の竹内涼真の共演で実写映画化。監督は、「アオハライド」「ホットロード」「僕等がいた」など数々の漫画原作映画を手がける三木孝浩。北海道・札幌。吹奏楽部に憧れるつばさは、「甲子園で戦う大介をスタンドで応援する」と約束を交わし、その約束を実現させるため、2人は互いに惹かれあいながらも、それぞれの部活動に邁進していく。(映画.comより)

 

一時期少女漫画原作の仕事が全部舞い込んでるんじゃないかという勢いだった三木孝浩監督、「orenge」や朝ドラで人気沸騰中だった土屋太鳳、現在人気沸騰中の竹内涼真、というなかなかの豪華メンバーで固めたこの作品。

 

吹奏楽部のヒロインと野球部のイケメンという、若干古臭いのでは?という題材だが、映画にしてみるとわりと音楽映画+スポーツ映画のハイブリッドという感じで贅沢な感じ。土屋太鳳と竹内涼真はちゃんと素朴な高校生の演技をしていてお似合いカップルに見える。また、先生役の上野樹里は個人的には過去一番のハマり役に感じた。(ドラマの「ラスト・フレンズ」もそうだが、シリアスな役柄のほうが抜群に良い) さらに脇役ながら熱演で主役を食っている志田未来など、キャスト勢は本当に素晴らしい。

 

問題点は脚本である。脚本の内容というより、尺に一番の問題がある。音楽青春パートと野球青春パート、そして2人の恋愛パートと、ええとこどりしようとしすぎて全体的に明らかに薄い。2時間の映画ではどう頑張っても40分ずつになるので、その中で出会い→挑戦→挫折→復活→成功を3パターンやるともなると、当然尺が足りない。さらにこの作中で3年の月日が経過する。どう考えても早すぎる。「ちはやふる」のように恵まれた環境であれば描き方も変わったのであろうが、名作とはいえ最新作でもないちょっと前に流行った漫画にそこまでの製作費はかけられなかったのだろう。

全体的にキャストもハマっており、ストーリーにも引きがある。題材としては名作に成り得た作品だが、やはり前述のとおり話が駆け足すぎて、原作を端折りまくっていることが未読者にも目に見えてわかるので、「本当は面白い話なんだろうなぁ・・・」という終始残念な空気が付きまとう。

 

深く考えずに青春ダイジェスト作品と思って割り切れば、泣けるシーンもあるし、話も綺麗にまとまっているので楽しめるかと思う。が、やっぱりこれは青春真っ只中の中高生が、これからのイケメンとの出会いをキラキラ夢見てウットリする方向に特化しているように感じる。原作はもっと大人の記憶を呼び起こすような行間もあってじっくり描かれていると思うのだが。

 

一方、個人的にこの映画で非常に感心したシーンがある。実はこの映画には野球部の竹内涼真とは別に、吹奏楽部の葉山奨之が演じる"水島"というもう一人の男が出てくるのだが、そこで凄まじい対比描写があるのだ。

 

ヒロインのつばさが、オーケストラの一員として人生初の舞台に出演するシーン。

弱気な性格のつばさは、人前でトランペットの演奏をすることが怖くなり、吹いているフリをしてごまかしてしまうという場面がある。オーケストラのうちの1人が吹いてないだけなので観客にはバレてはいなかったが、当然同じ舞台に立っていた水島には気づかれてしまう。そんなつばさに対し水島は「吹いてなかったよね?本番で吹かなかったよね?頑張るんじゃなかったの?これからも吹き真似やっていくつもり?それ、やる意味あるの?」とものすごい勢いで正論をぶつけるのだ。

その後、つばさは教室で一人しょんぼりしていると、竹内涼真演じる大介が登場する。大事な舞台で挑戦せずに逃げてしまった自分の弱さを大介に告白し、つばさは涙してしまう。するとそれを聞いた大介はおもむろに教室を飛び出しジュースを買ってくるのだ。そして「大丈夫?これ飲んで元気出して。俺はやれるって信じてるよ。」と満面の笑みでつばさを受け入れる。という一連のくだりがある。

 

これを見たときに、「ああ、三木監督が支持される理由はこれか」と確信した。

つまり、女子が辛いときに求めているのは水島のように正論をぶつけてくる男ではなく、黙って何も言わずにジュースを買ってきてくれる男である、と訴えているのだ。

 

おそらく観客の女子たちは「これを見ている水島みたいな男どもよ、それがモテない所以なんだよ。周りの女子たちを見てみるがいい、このシーンを見てうっとりしているだろう?これが女子が求めるものなんだよ。モテる男っていうのはこうやって辛いときに黙って優しく微笑んで、女子にモノを買ってくれる人のことを言うんだよ!覚えとけや!」と喝采するであろう。そんなシーンをさらっと入れてくる三木監督。

 

そりゃ支持されるわな。

 

いやほんとすごいよ、勉強になりました。(まあ水島もイケメンなんですけども)

 

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青空エール

青空エール