SOUTH PARKの住人

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映画レビュー「アントマン&ワスプ」


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アントマン&ワスプ」(2018年)

★★★★

 

まずはっきりしていることは、今作はアントマン/スコット・ラングの物語ではない。ポジション的に彼は脇役である。今回の主軸にあるのは初代アントマンであるハンク・ピムが、初代ワスプである妻を量子世界から救い出すことだ。

スコットと家族、新生ワスプ、ピム博士と妻ジャネット、ヴィランのゴースト、ゴーストに協力する博士、ルイスと仲間たち、FBI、マフィア、とシンプルだった1作目と比較すると少々人物に関しては複雑である。ただ、物語の争点はラボの奪い合いに終始しており、量子や科学の話などで一見難しそうに見えるが「ラボさえ手に入れればなんとかなるのねー」と流して見てても置いてはいかれないだろう。

ただ前述の通り、本作はあくまでものホープ/ワスプとピム博士親子によるジャネットの救出であり、スコットはほとんど部外者である。シビルウォーで博士たちを巻き込んだことへの贖罪という理由で協力しているに過ぎない。むしろ量子世界の情報を得るために利用されている(スコットの優しさとホープへの愛情もあるが)。

 

 

※ネタバレあり

 

 

今回は各キャラクターによる思惑の絡み合いがあまりスッキリしていないように感じる。その最たる点は、メインのストーリーが勧善懲悪ではないことだ。まず、今作のヴィランであるゴースト、彼女は悪ではない。事故により特殊体質になってしまい、余命幾ばくと迫っているという苦しみを背負った被害者だ。そんな悲壮的な背景があるので、どちらかというと感情移入をさせられてしまうキャラクターである。本来、ヒーロー目線で見れば、彼女も救わなくてはならない対象だが、今作では自分の命のために主人公サイドの目的を阻害するという一点だけでヴィラン役を担っているため、ヘイトがあまり蓄積されていかない。しかもこっちはアントマン&ワスプの二人組なので、一層フェアには見えないのでモヤモヤする。最終的にはゴーストも救うという展開になるが、それまではあまり気持ちのいい攻防とは言えない。勧善懲悪ではない(敵にも敵の正義があり、主人公が必ずしも絶対的正義ではない)というストーリーに何か意味があるのかなと思ったが、特にそこには言及されなかったのも少し残念である。

 

 

なんでわざわざこんなスッキリしない配置にしたのかは謎だが、少し邪推を働かせて考えてみると、ゴースト役のハナ・ジョン=カーメンはナイジェリア系のハーフ、博士のローレンス・フィッシュバーンも黒人である。黒人を極悪に描いて、白人である主人公たちがやっつけるのはディズニーのポリコレ精神的には些か問題である。なんらかの思惑が働いたのでは…と勘ぐってしまう。(まあサノスという最大の敵を描いた後に、下手な悪キャラを作ってもショボく見えてしまうというのもある気はするが)

 

職を失い、家族を失ったスコットが、逆境の中でヒーローとして敵に立ち向かい、周りに認められていく痛快さがウリだった1作目アントマン。そういう意味では、面白いところは前作でやってしまっているので、本来あの面白さをまた求めるならば焼き直し展開になるはずである。

ただ今作が最も良かった点は、前作との差別化がしっかり成されていて、全く新しい物語と映像を見せてくれたことだ。ヒーローモノの続編というのは、だいたい同じような展開になりがちである。たとえばライミ版のスパイダーマンなど、3作とも最終的に攫われたヒロインのMJを救う話になってしまっている。

本作では、ゴーストがスコットの娘に手を出そうとして、フォスター博士に静止される場面があるが、これも前作の展開をなぞることを避けているように見える(娘を助けるという動機での戦いにはならない)。また、今回は小さくなったアントマンが、ミクロな視点から日常世界を見るシーンがほとんどない(序盤の車の鳩のシーンとラストくらいか)。

街中でのカーチェイスや、三つ巴の戦闘など、見た目に新しいネタがふんだんに取り入れられ、もはや続編を観ている感じがしないくらい新鮮だった。(サンフランシスコのカーチェイスはやっぱりどんな映画でも最高なのだ…)

ルイスの早口シーンなどのお決まりの場面も、自白剤を打たれて拍車がかかっているというアレンジを加えていて面白すぎた。半分以上が妄想っぽいのが更に面白い。マジでマイケル・ペーニャは超絶クールだ!ワザー!!


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気になる点も多くなってしまったが、全く新しいアントマンの新作を観られて非常に楽しく、よく前作であれだけやったのにまだまだネタが出てくるなと感心した。ワスプは前作よりさらに可愛くなってるし、スーツのスタイルも良いし、戦闘とトリッキーで魅力的。マトリックスのトリニティを彷彿とさせる。ラストのピム博士と妻のジャネットが量子世界で再会するシーンは、大御所俳優の流石の演技力もあって普通に泣いてしまった。時間を超えた壮大な再会は、どんな映画でもそうだが自分の涙腺を直撃する。

敵も誰も死なないのにこんなに面白い。ずっとこのゆるめな世界観に浸っていたいと感じる作品だった。

 

 

 

 

 

しかし、

 

ラストのエンドロール後のポストクレジットシーンだけはいただけない。本当にいただけない。インフィニティ・ウォーへ繋げるための整合性を取るのに必要なのはわかるが、主要人物が全員死ぬのをわざわざ描くのはやりすぎだ。あまりに作品としてのテイストが違いすぎる。正直、ワスプはサノスのスナップで死ぬのかな…くらいに覚悟していたが、それもアベンジャーズ4で語られる程度だと思っていた。ポストクレジットシーンはあくまでもオマケであり、本編と切り離して考えるべきだとは思っているが、それまでピースフルな物語だった分、鑑賞後の後味はMCU史上最悪である。クリフハンガー的に次回作へ興味を引かせるのはまあ良いが、アリがサラサラと消えていく程度のアントマン風のノリにすることはできなかったのか。最後にアリがドラムを叩き続けるシーンは、本編では最高に面白いギャグだったのに、もはやホラーと化している。

 

前作とは全く違う面白さがあり、アクションもパワーアップしている。本編は素晴らしいので、早くアベンジャーズ4を観させてくれ…。このままだともう一度観るのは辛い。これもMCUの思惑通りなのか…?

 

※おまけ

ワザー!!の元ネタのCM


budweiser wassup commercial - YouTube

意味不明すぎて面白い。