SOUTH PARKの住人

1日1記事毎日更新!(という目標) 映画好きです。

軽く書籍レビュー『100日後に死ぬワニ』

 

f:id:southparks:20200410180508j:plain



購入しました。

SNSで大炎上して一気に音沙汰が無くなってしまった『100日後に死ぬワニ』の書籍版。

商売の仕方の節操が無さは自分もこのブログで批判したが、やはりこの作品が優れているという点はどうしても否定することはできないのです。

 

southparks.hatenablog.com

 

 

SNS世代に共感しやすいスマホやゲームのあるあるを混じえ、どこか退屈ではあるが不平不満のない日々を過ごし、主義主張は持たないサイレントマジョリティな日本の若者。そんな普遍的な日常描写が、多くの人に共感を得た点だろう。

これまであまり切り取られてはこなかった、多くの現代人が感じている「何も起きない地味な人生」にフォーカスを当て、そこに誰もに起こりうる「100日後に死ぬ」という設定を持たせることによって、ただの生活の描写に意味合いを持たせる手法は、とても惹き付けられるものであった。
f:id:southparks:20200410170208j:image

(こういう描写がとても好き)

 

デフォルメされた動物のキャラクターたちと、エッセイマンガのような表情少なめの淡白な絵が、一歩間違えると説教臭くなりそうなメッセージ性を希釈しているとも良い。このほのぼのとした世界観が「幸せな日々に訪れる若者の死」という重い主題と上手く相反して良かった。

 

で、今回の書籍版だが、ぶっちゃけ本編自体はTwitterで無料で読めるので、普通にストーリーを追うだけならこの本は買う必要は無い。個人的には100日間楽しませていただいたので、お返しの気持ちとして購入させていただいたところもある。書籍版の売りは書き下ろし漫画だ。

ただ、今回の書き下ろし漫画28Pというのは、こういう1枚イラストも含むので少々誇大広告のように感じる。

f:id:southparks:20200410180609j:plain

(ここも叩かれそう。反感を生んでしまう余地を作るなと言いたい…)

 

もちろんちゃんとした後日談も掲載されている。

ワニの死から数ヵ月は経った世界。(服装やみかんの収穫時期など鑑みると、5~6ヵ月は経っていそう)

主要な友人たちが、ワニとの不在をどこかに抱きながら、新しい日々を生きていく姿が描かれていて、いずれのエピソードもなかなかジーンとくるものがあった。ワニの死に関して言及する者は1人もいないのだが、確かにそこにはかつて彼の存在があったことが隅々から感じられる。セリフを極力抑えたテイストで説明的でもなく、読後感の良い後日談であった。

だからこそ例の羽の生えたワニのイラストは最悪であるのだが。
f:id:southparks:20200410163902j:image

(何度見ても酷い)

 

あとほとんどの人はどうでもいい要素であると思うんだけど、個人的にちょっと気になったのは、この本が右開き仕様であること。自分は時間に対して左から右に流れていくイメージを持っているので、100日の経過を追体験するには、左開きで読みたかったなと思った。(縦書きの書籍は右開きにする出版ルールみたいなので仕方ないのだけど)

 

あと、考察班の間で物議を醸した、ネズミが送ったLINEとワニが受け取ったLINEのメッセージの違い(「よくね?が無い」)に関しては、修正されていた。普通に誤植だった模様

f:id:southparks:20200410164819j:image

f:id:southparks:20200410164823j:image

(こちらは書籍版では修正)

 

自分はもともと書籍化に関しては絶対あるだろうと思っていて、前々からこれだけは買うつもりでいた。ここにて本当に『100日後に死ぬワニ』は完結した気持ちである。

グッズとかにはやはり興味が湧かない・・・。死んだワニのグッズを持つのは気が乗らない。どう考えてもこう感じる人の方が多いと思うのだが、この企画を進めた人は一体どこに勝算を見たのか・・・。未だに謎である。映画化とかマジでどうするつもりなんだろうか。最悪のシナリオだと山崎貴のCG映画になるという地獄の展開だってあるうるぞ…。

 

おそらく今回の騒動は、SNS上での商業化ビジネスの失敗例として後世に影響を与え続けることになるのだろうが、やはり自分は『100日後に死ぬワニ』の作品自体はとても面白かった、ということは忘れずにいたい。