SOUTH PARKの住人

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コロナが興行を破壊したこと

「興行」というものが成り立たなくなるかもしれない。

スポーツや演劇などは、実際に選手や演者を生で見たいという目的があるが、映画館はどうだろうか。映画館に行くというのは「わざわざ劇場に足を運んで画面を見にいく行為」である。

NETFLIXの躍進から始まり、現在のDisney+やHBOmax、Paramount+など、このコロナ禍で配信サービスが一気に我々の家庭まで進出してきた今、日本ですら、アマゾンプライムで映画を観るのは当たり前になっている。「鬼滅の刃 無限列車編」が記録的大ヒットとなったことも、配信サービスでテレビシリーズを事前視聴した人が多かったことが理由であるのは明白だ。レンタルビデオ屋が潰れまくっているのは、この煽りを受けてしまった意外の何物でもない。

映画館が生き残っていくにはどうすればいいのだろう。個人的な想いで言うと、アメリカはすでに興行文化終焉への不可逆のパンドラの箱を開けてしまったと思っている。あまりにコロナ以降、配信サービスが本格化しすぎた。現状、興行への配慮を行う意味でも、映画館で先行上映を行って、1カ月後に自社サービスで配信するというギリギリの折半を行っているが、これも限界が来ると思う(現にディズニーは同時配信をしている)。

しかもアメリカは日本と違って映画館のマナーが良くない。上映中にデカイ声で話をしたり、スマホで通話したりは日常茶飯事である。地域差はあるものの、場末の映画館に行けば行くほどマナーは劣悪になる。「自宅という快適な環境で新作映画が見られるならそれに越したことはない」と考える人も多くいるはずである。欧米の居住環境であれば質の良いホームシアターを構築するのも難しくないだろう。

 

最近は「GODZILLA vs KONG」がコロナ以降最大のヒットを見せたという景気の良いニュースも入ってきてはいる。今後も「トップガン」や「ブラック・ウィドウ」などの大作も控えている。でもこれらはコロナ以前に撮影された所謂前時代の遺産だ。今後撮られる映画の在り方はどうなるのだろうか。

 

映画館の独自性は、大スクリーンと音響設備である。これは絶対に自宅で再現することは不可能だ。私もそうだが、映画館で映画を観る理由は、「映画館に行かないと見れないから(時限独占期間があるから)」「大画面・大音響で観たいから」である。ではその双方が満たされなければ行くだろうか。

 

ヒットする映画というのは基本的に大画面・大音響に映えるスペクタクル作品が多い。これは映画館という視聴環境に、製作側がそういうビジュアル面に寄せていった結果でもある。今後家で映画を鑑賞する機会が増えたら、映画の作風にも逆転現象が起こると予想する。

大スペクタクル映画ほど家で観たらショボく感じ、画面のサイズに関わらないじっくり魅せる内容の映画が生き残っていく傾向になると思う。映画館にとっては悪循環でしかない。今年のアカデミー賞のノミネート作品たちを見ても一目瞭然だが、いい意味で地味な作品が増えた。これはNetflixなどの配信サービス発の作品が増え、製作側にとって、映画館に適した映画を作る必要が無くなってきたからだ。

映画館で上映できないのであれば、わざわざ高い予算をかけて超大作を作る必要もない。となると、利益を得るために映画館に合わせた映画を作るという選択肢は減っていき、大作がやらないのであれば客は映画館に行かなくなる。家で観れるならなおさらだ。

このままでは徐々に、全世界的に映画館で鑑賞するという文化は縮小していくだろうが、ただそれはまだ2~30年は映画館は続くと思う。なぜならまだ我々の世代は「映画館で映画を観ることの良さ」を知っているからだ。しかし今後、映画館の良さを知らずに育っていく子供たちが時代の担い手になったときに、興行という業界はどのように適応していくのか。

サブスクというサービスは、長く契約を続けさせなければ成り立たないため、一度生まれたら余程の革新や、通信インフラ自体に障害が出ない限り消えることはないだろつ。コロナ以前にもう戻ることはおそらく無いかな。今度は家にいたら感染するウイルスでも流行らない限り。

 

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