久々に家で映画を観たので今さら感のあるレビューを書いてみますね。
観たのは『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』です。記事のタイトルで「映画レビュー」と銘打ってないのは、否定的な内容を多めに含むからなので、本作が大好きな方は読まずにスルーしてください。
※少量ですがネタバレあり
何故ただでさえ映画を最近全く観ていない自分が、重い腰を上げてこれを今さら観たかというと、今週から始まった『ザ・スーサイド・スクワッド』を観たいがためです。自分がレビューを書くと前回の100ワニみたいにダラダラと長文になるので、なるべく簡潔に思ったことを述べようと思います。読みやすいように・・・。
まず観終わってすぐ思ったこととして、「ヴィランが主人公の映画」と「対立構造からカタルシスへと落とすアクション映画の構造」って相性悪くないですかね。
ヴィランが対立する対象はヒーローだけど、ヴィランが主人公の映画にヒーローを出すわけにはいかない。なんせ原作はヒーローモノ(英雄譚)なんだから、基本的にはヒーローが主役で、悪役はサブキャラなわけで。
「じゃあヒーローも出した上でヴィランを主人公にして、逆転させてしまえばいいじゃん」って思いますけど、世の中にはある程度の確約されなくてはいけないモラルってものがあって、尚且つ大衆映画というコンテンツは売り物であって、著しく倫理観を損ねたものはスポンサーもつかないし、社会に与える影響などへの責任も生じるし。そもそも基本的に穏やかな生活、平穏を望む我々人間にとっては、悪が勝利する物語って不安になるじゃないですか。ヴィランを主人公にしてヒーローを叩きのめすなんて映画は、そう簡単には打ち出せないし、そんなもの商業ベースに乗せられないですよねっていう。
そこを理解した上で、今回の『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』みたいな作品を観ると、難しいよなぁ~って思うのです。ハーレイは可愛いし魅力的だけど、元々はバットマンと敵対する悪役ですし、犯罪を犯す人物として描かれているので社会的にも悪です。そんなキャラでも主人公に据えた以上は、前述した勧善懲悪の対立構造に落とし込まなければならないために、もっと悪いやつを出すしかなくなる。結局観客は「悪いやつを倒せー!」って気持ちで観るわけですので、主人公はダークヒーローになっちゃうんですよね。ダークヒーローになることが悪いってことでは全くないのだけど、善悪の線引きが難しくなるのは確かで、ヴィランを主人公として成立させるための正義をどのレベルにするかが重要になってくる。
ここのバランスが難しくて、基本は悪であるために主人公になったから「いいもん」になるわけではない。「悪いやつを倒そうとするけど、犯罪も犯す」のです。キャラクターのアイデンティティを保つにはこうするしかないのは解ります。「いいもん」になったらつまらないですからね。悪い子だから魅力的なので。
ただ、この塩梅が、本作の描き方では個人的には居心地が悪くて・・・。前作『スーサイド・スクワッド』は敵も味方もかなりSF寄りな世界観だったけど、今作は極めてリアル調。最後の方で変な波動を出してる人もいましたが、基本的には実際にありそうなマフィア抗争くらいの温度です。
そういう中で今作のハーレイも暮らしているわけで。となると、ハーレイが犯す軽犯罪の数々を見てると、単純に不快になってしまってね・・・。どれだけ美味しそうにサンドイッチを食べても包み紙をポイ捨てした時点で嫌だし、スーパーで万引きしてカートで店員を跳ね飛ばしてケラケラしてる人間のことを好きになれないし。(自分の心の余裕が無いせいもあります)
前作でもハーレイはショーウィンドウ破壊して窃盗したりしてたが、あっちのフィクションラインではあんまり気にならなかったんだけど。ヴィランのチームでも「大いなる敵にその能力を持って対抗するための組織」だったし、戦地に赴く兵士という風に描かれていたので、多少のことは目を瞑りましたよ。
でも今回のイザコザって、てめえらが起こしたトラブルのてめえらで納めてるだけなので、「どっちも犯罪者だよね」って気持ちでしか見れなかったので、終始その軽犯罪を繰り返すお調子者ムーブに乗れなかったのです。あとこの世界観でビジュアル的にハーレイだけが浮きすぎて終始違和感あったのも少々ノイズ。
ヴィランとヒーローの立場を逆転させながらも成立させた『ダークナイト』も、結局は「正義とは何か、悪とは何か」の答えを出さず、観客に問う物語にしていて、悪を肯定しているわけではなかった。あれがエンタメ作品における善悪逆転の描写の限界かなーと思ってたら『ジョーカー』という更なるぶっとび作品が出たもんで驚きましたが。
話が逸れたけど、あと女性vs男性の構造もやりすぎかな・・・。男尊女卑の男たちを、めちゃめちゃ強い女性が薙ぎ倒す映画や漫画は大好きなんですけど、これはあまりに露悪的に描きすぎではないかな。敵は見事に全部男で、味方は全部女。白人男性はどんな惨めな殺し方をしてもOKなフリー素材みたいになってるし、これで社会的に正しいと言えるのか・・・。もはや対立を煽ってるのかと錯覚しましたよ。
あと単純にアクションがあんまり好みじゃなかったかな。いくらなんでも味方側の腕力強すぎん?特に警察の貴女。あんなに屈強な兵士たちを、力任せでポイポイ殴り飛ばすのは違和感あり。フィジカルだけじゃなくて、もっと頭脳戦やテクニックで翻弄してほしかった。ボウガンの子はカッコよかったですけど、もっとバシバシ撃って欲しかった・・・。突如放り込まれる激ゴア描写は良かったですね。顔面皮剥がしとか。最後の最後でヤツが爆散したのは「やりおるな」と思いました(*´ー`)
最初の話に戻りますが、アクション映画になると、ヴィランですら悪と戦わなくてはいけないっていうのが辛いですね。キャラクターの魅力を削がないようにすると無理が出るし。結局前作の『スーサイド・スクワッド』や『ヴェノム』だって、その辺が批判されてましたよね。やっぱ難しくないですか。ヴィランを主人公にした映画って。自分は2作とも好きでしたけどね。(なんじゃそら)
というわけで、ジェームズ・ガンはどういうものを見せてくれるのか、今週中には観に行こうと思いまする。
サンドイッチの美味そうさは100億点。