SOUTH PARKの住人

1日1記事毎日更新!(という目標) 映画好きです。

映画レビュー「シビル・ウォー/ キャプテン・アメリカ」

「シビル・ウォー/ キャプテン・アメリカ」2015年

★★★★☆

 

f:id:southparks:20181002200514j:image

このポスター最高にイカス。

久々に「シビル・ウォー/ キャプテン・アメリカ」を見返したので今更だがレビューしてみる。

 

※ネタバレ全開です、念のため

 

劇場で初めて観たとき、ルッソ兄弟の激しく動きまくる手ブレカメラがあんまり好きくないなぁ…と感じたのだが、やっぱり何度見ても同じく見辛いところがあった。特に冒頭のラゴスでの戦闘シーンはかなり激しく、戦争映画みたいなカメラワークで、徹底的にリアル描写に寄せている中で動きまくるので酔いそうになる…。

逆に空港の戦闘シーンはビックリするくらい見やすい。何万回も再編集したんじゃないかってくらい不気味なほど完成度が高い。綺麗すぎて荒々しさがないので、こっちはこっちで作りものに見えすぎちゃったり…(どっちやねん)。

 

いきなりイチャモンから入ってしまったが、今回改めて思ったのは、本作はMCUの中で他と比較にならないほどシリアスな話だということ。その分、スティーブとトニーが対立に至るまでの感情のゆらぎが、非常に丁寧に描かれているなぁとも感じた。

特に印象深いのは、ソコヴィアで息子を亡くした母親のエピソード。母親が息子の写真を出そうとカバンに手を入れるのを見て、トニーは拳銃を取り出そうとしていると勘違いしてしまう。世界の平和を守っているはずの自分が、最もその平和を感じていないと気づいてしまうのだ。あの短いシーンだけでトニーが協定に賛同するのに十分な説得力がある。「あなたは傲慢だ」とか散々色んな人に言われるが、それは性格や振る舞いだけで、トニー・スタークというは誰よりも世界の人々に対する責任を考えていて、利他的な人物あることが本作ではより強く描かれている。

一方キャプテンアメリカことスティーブは、本作では最愛の人であるペギーを亡くし、唯一過去の本当の自分(人間らしい自分)を知っている存在であるバッキーを守ろうと奔走する。警察を打ち倒してまで「友達だから!」とバッキーを守るスティーブは、逆にとても人間らしい行動原理で動いているように見える。その分、トニーとは対象的にかなり利己的に描かれている。

したがって、本作での対立の争点とされるのは、ヒーローは個を捨て、人のためにあるべきか?ヒーローは個を持ち、人としてあるべきか?というところである。

前者につくのはアイアンマン、ブラックウィドウ、ウォーマシン、ヴィジョン、ブラックパンサースパイダーマン。後者につくのは、キャプテンアメリカ、ウィンターソルジャー、ファルコン、スカーレットウィッチ、ホークアイアントマン。こうやってみると、上手いチーム分けだと思う。アイアンマン派はどちらかというとヒロイズムに溢れたタイプで、キャップ派はヒューマニズムタイプである。

と言っても、この映画ではトニーとスティーブのパーソナルな部分での対立がかなりフィーチャーされていて、ソコヴィア協定自体や、ヒーロー達がその思想に賛同するかどうかというところはあまり深く掘り下げられない。

この点は原作好きからは特に賛否が分かれるところのような気がするが、一本の映画でシビルウォーを描くにあたってはこれで正解だったように感じる。そのお陰でエンタメとして非常に見やすくなってると思うし、重苦しくなりすぎないMCUの良さが発揮されたと思う。観客が見たいのはヒーローの夢の共演であって、個々の葛藤ではないという判断だろう。

対象的な二人の思想がどんどん決裂していく様子だけでストーリーの引きとしては最高で、ラストでどのような着地を見せるのか気になって仕方がなくなるのだ。

 

ちょっと気になる点でいうと、終盤でトニーがジモの暗躍に気づき、自身の過ちを認めようとする展開がイマイチよくわからない。キャップに「私が間違っていた」と謝罪をするが、これは協定賛同に関して?それとも冤罪であるバッキーを捕まえようとしたことに関して?ジモが黒幕であることと、協定の是非は全く別の話だし、むしろジモはソコヴィアでの被害者なので、そこ点で見るとやはり協定賛同の方が正しいように感じる。

自分の理解力の乏しさもありここらへんのトニーの動きはちょっと気になってしまったが、その後のバッキーがスターク夫妻を殺害していて、それをキャップが知っていたという展開は凄かった。5人の強化人間という結構長めの前フリが丸ごとミスリードで、全てはラストのキャップvsアイアンマンのお膳立てだったというシナリオは恐れ入った。「なんだバットマンvsスーパーマンみたいに結局共闘すんのかよー」と思った観客を一気に奈落の底へ突き落とす。

最終的にスティーブがトニーの胸に盾を突き刺す場面は何度見ても辛い。馬乗りで心臓を突き刺すのはもはや殺したも同然である(死んでないけど)。ヒーローがヒーローのトドメを刺すのをここまではっきり描かれるのは今までに無かった気がする。それだけこの一撃は重いのだ…。

ここでの対立は未だに解消しておらず、来年のアベンジャーズ4で4年越しに感動の和解を見せることになる…はず。ラストシーンでスティーブから贈られた携帯電話を、インフィニティ・ウォーでトニーが肌身はなさず持っていたのは嬉しかった。(結局バナーがかけるのだが)

 

個人的なベストバウトは、ラストのロケット発射台での追いかけ合いである。宇多丸も批評で言ってたような気がするが、ルッソ兄弟は戦闘シーンにおいて空間の使い方が絶妙で、特に縦軸での戦闘が上手い。本作で言うとアパートのシーンと、ラストのこの発射台のシーンである。重力が下に働いていることをフルに生かした戦闘の魅せ方が最高だ。

とにかくこの追い詰められたトニーの目視撃ちがかっこよすぎるので満点。


f:id:southparks:20181003050109j:image

 

とにかく全編に渡って戦闘シーンの練られ方が半端ではなく、美術面ではパンチでの壁の壊れ方1つ取ってもめちゃくちゃこだわりぬかれてると思う。この後のMCUはどんどん人外の者たちの戦いになっていくので、人間同士の戦いとしての映画では本作は最高峰の出来であることは間違いない。

何回も観てるせいで粗も見えてきたが、繰り返し観たくなる魅力が詰まりまくった傑作である。

 

だが最も衝撃だったのは、メイおばさんがマリサ・トメイだったというところである…。

いじわるばあさんみたいなビジュアルのおばさんしか知らなかった自分からしたら、メイおばさんが若くておまけに女を醸しているというのは本作、いやMCU最大のミスリードであった。

このキャラクターは「スパイダーマン ホームカミング」に向けて、加速度的に成長していくことになるのだ。(もちろん淫猥な方向に)


f:id:southparks:20181003060717j:image