SOUTH PARKの住人

1日1記事毎日更新!(という目標) 映画好きです。

『モンスターズ・ユニバーシティ』は完璧な前日譚だ

 世の中には確実に言えることがある。

二度寝より気持ちいいものはない」「夜中に食うラーメンは美味い」そして・・・「ピクサー映画は大人になってからの方が楽しめる」だっっ!!!

 

と引くほどド下手で関連性の無い前フリをかまし恥じらいの心を鍛えつつ(無意味)。最近Disney+でピクサー作品を順に見返してるのだが、今回は前回の『ファインディング・ドリー』に続き、『モンスターズ・ユニバーシティ』を観た話。


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2020年のマイベストである『2分の1の魔法』の監督のデビュー作であり、大ヒットを記録した本作。しかしなぜか世間の評判はそこまで高くなく、まさかのアカデミー賞の長編アニメーション賞のノミネートからも外れるという結果に・・・。(その年は『アナと雪の女王』が受賞)

 

原因を考えてみたのたが、『スター・ウォーズ』が最たる例で、ファンに愛された作品ほど、前日譚というものは簡単には受け入れられ難い。本作も然りで、10年もの長い年月をかけて愛され続けてきた『モンスターズ・インク』の前日譚を描くハードルはとてつもなく高い。何と言っても、10年間ファンの中にはサリーとマイクのキャラクター性が焼き付けられている。「あんなに人格者だったサリーがなんでこんなわがままなのか?」「あんなにポジティブだったマイクがこんなに鬱々とするなんて…」という前日譚特有のキャラ崩壊を観客は感じてしまい、ストーリーが素直に頭に入って来なかったのではなかろうか。(もちろん最後まで見れば腑に落ちるように作られているのだが)


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しかし、またさらに10年が経とうとしている今、フラットな気持ちでもう一度見返して欲しい。このシリーズは2作通して素晴らしいシンメトリー構造を築いている。マイクが与えた影響がサリーを変え、サリーがもたらした成果によってマイクの夢は果たされる。我々の人生も、夢を見る⇒挑戦する⇒挫折する⇒挑戦する⇒また夢を見る、という繰り返しだ。もちろん本作はファンタジーなので都合の良い点も多々あるが、ピクサーが描くキャラクターの心情描写のリアルと、普遍的な物語も相成ってきっと共感できるポイントはたくさんあるはずだ。ピクサーアニメ全般に言えるが、年月が経てば経つほど熟成する物語が作られていて、決して一過性の話では終わらないところが驚異的である。『モンスターズ・ユニバーシティ』も鑑賞者自身が変化し成長した今なら、全く違った味わいを見せるはずである。(俺がそうだったから!)

 

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そもそもピクサー作品は、これまでのディズニーの作品より男性社会の要素が強い。基本的にほとんどのピクサー作品にはプリンセスが登場しない。『モンスターズ・インク』もご多分に漏れずだ。ビジュアル面こそ万人受けする可愛らしいデザインなものの、描かれる物語は派閥闘争や、職場での出世レースで、いずれも男の人生の美学や哲学、プライド争いが根底にある。このシリーズで描かれる大学や会社でのドタバタ劇も女性からみたら子供っぽいものに見えるかもしれないし、恋人をほっぽらかすほど仕事や夢に奔走するサリーとマイクの距離感も、いまいち共感し辛いかもしれない。

前作はまだ、ブーという子供との疑似親子関係がテーマにあったので比較的わかりやすいストーリーだったが、前述の通り男社会のリアルを描く今作はかなりターゲットが絞られている(そもそも大学という舞台も結構共感できる層が絞られると思う)。大学生→社会人という世代設定からしても明らかに大人向きな内容であり、評価が割れたのはこのあたりに理由があるのかもしれない。

だが自分は『2分の1の魔法』を観て、『モンスターズ・ユニバーシティ』との共通点をかなり感じた。とにかくキャラクターによるな演出が上手い。「みなまで言うなよ、わかってんぜ」的な熱さ。この監督は努力・勝利・友情を熟知している!子どもも楽しめるし、大人は共感できる。このシリーズがディズニー作品の間口を広げたのは間違いない。


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モンスターズ・インク』を観なくては『モンスターズ・ユニバーシティ』の感慨の全てを味わうことは出来ないが、『モンスターズ・ユニバーシティ』があってこそ『モンスターズ・インク』であることは間違いない。別の監督が撮ったとは思えないくらい前作に対してのリスペクトが込められており、そして何の違和感や矛盾も無く、10年前の次作へと繋がっていく。物語が終わったころには、サリーもマイクもさらに大好きになっているはず。そうして2人の背景を知った後にまた『モンスターズ・インク』を観たら、もう大号泣待ったなしである。

キャラクターのことがさらに好きになる。これが前日譚のお手本であり最高峰であろう。泣いて笑って熱くなれる、大人を救済する物語なのだ!

 

大人を救済するとはどういうことか。長くなってきたので内容の話は次回へ続く。